流感悟道 3月

昨年、岐阜県立博物館で「奇なるものへの挑戦」展覧会が開催された。明治後期、急激な近代化によって人々に科学への関心が芽生えるとともにその真逆の事象ともいえる「心霊学」「神秘学」がブームになったことに焦点を当てた展覧会である▼この時期の「千里眼・念写」について取り上げたのが私の興味を引いた。東京帝国大学の山川健次郎博士と福来友吉博士が長尾郁子の念写実験を行ったが、山川博士はラジウムを利用したインチキではないかと指摘した。真相を解明できないまま、長尾郁子は亡くなり彼女の能力を信じていた福来博士は帝大を辞職した▼先日、福島第一原発の汚染水が海洋流出している事態が発覚したが、前に菅官房長官も安倍首相も「汚染水は完全にブロックされている」と言ったのではなかったか。非正規労働者の増大が賃金抑制を招いているのは政府自身が認めているが、安倍首相は正規労働者も増えているというばかりで質問にまともに答えない。言葉が軽いというか誠実に国民に向き合っているとはとても思えない。彼はまた「アベノミクスは確実に成果をあげている」ともいう▼「ないもの」をあるように言う。これは現代の心霊学、神秘学だろうか。私たちが求めるのは確実に賃金が引き上がることだ。福来博士はその後、福来心霊研究所を設立し、その研究に一生をささげた。研究対象はあやしげでも科学に向き合う誠実な態度は尊敬に値する。彼は高山市の出身であり、高山市には福来博士記念館がある。(かわしまのぶとも)